元興寺(極楽坊)は、奈良町歩きの中心ともいえる見どころ。奈良市街でもトップレベルの貴重な建物を見られるほか、今はなき大寺院の面影をかいま見られます。古建築めぐりや奈良町歩きで、うっかり見落とさないように、どんなところかここでチェック。
本堂(極楽堂)
元興寺に着くと、大きくないながらも立派な感じの東門(重要文化財)と、その向こうに大きな本堂が見えます。奈良時代に建てられた僧房(僧侶が住む建物)を、鎌倉時代に改築したといわれていて、国宝建築です。大きくて立派な屋根には、飛鳥時代から残っている瓦が混じっているとか。あと、正面の柱の本数が奇数で、まん中に柱があるのがユニークなのと、柱の間隔がまん中ほど広くなっていて、リズミカルな感じがするのも見どころです。
元興寺の本尊は、仏像ではなく曼荼羅です。本堂に、智光という人が描かせたという、極楽を描いた「智光曼荼羅」がまつられています。
元興寺は、奈良時代には東大寺などに匹敵する巨大なお寺だったとか。その中で、僧侶が住んでいた僧房の1ヶ所に智光曼荼羅がまつられて、信仰を集めて独立していきました。元興寺が火事で衰退してもここは残って、今では元興寺の名前を残す2つのお寺の1つになっています。極楽を描いた曼荼羅が本尊なので、このお寺は通称「極楽坊」と呼ばれてきました。
禅室
本堂の後ろに続いている長い建物。これも奈良時代に建てられたもので国宝です。もともとは、本堂とあわせて1つの建物だったのを、鎌倉時代に東端を本堂として独立させて、残ったのが今の禅室。つまり、奈良時代の僧房の姿を残す貴重な建物、というわけです。ふだんは非公開なので、外から眺めるだけですが、奈良時代の大寺の姿を想像してみたいところ。
浮図田(ふとでん)
本堂の左側を進むと、たくさんの石仏が並んでいます。浮図田と呼ばれるエリアで、その数、1,500だとか。極楽信仰のお寺として信仰されてきた歴史が表れている、と言えそうです。毎年8月23日・24日に行われる、「地蔵会万灯供養」という行事では、石仏の前に灯明皿が並べられて、火が灯ると幻想的な眺めを楽しめます。